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 シュナスザです。

 『
黒白世界の極彩色』様よりお題をお借りしました。

 お題名“移ろう四季の色4題”です。



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 彼はいつも死を望んでいるように見えた。

 だから、私は彼が誰かのものになるのならいっそ…最も華々しい終幕を用意しようと思ったのだ。


冷たくて温かい純白


 「ナイトオブラウンズになったそうだね。」

 直接会った彼の顔は数日振りだったのにも関わらずシュナイゼルには様変わりして見えた。

 「…はい。」

 頷く彼の顔は微笑む事もしない、ただ冷たい瞳が自分を見つめるばかりだった。

 「ユーフェミアの事は……」

 「自分の力の至らなさです。殿下からも処分を受ける覚悟をしております。」

 『からも』という事は、すでに誰かから処分を受けたという事だろうか。

 自分以外に処分を下すとすればコーネリアか…しかしコーネリアは姿を消している。
 行方は杳として知れなかった。

 ならば、他に可能性があるとすれば皇帝から何かしらの罰を与えられたという事か。

 ふむと一つ頷くとシュナイゼルはスザクを観察する。

 「枢木君は処分を受けるだけで気が治まるのかな?」

 特に表情に動きはないが、わずかに肩が揺れるのを見て一つ溜息をはいた。

 「……スザク。」

 畳み掛けるように昔の呼び名で呼べば、顔から血の気がひいていく様が見えた。

 顔色が酷く悪い。

 少し風がふきつければ、すぐに倒れてしまうのではないかと思える程に。

 「私は上に立つものとして、君に最高の死に場所を用意する事が出来る。」

 緑の瞳が絶望の色に染まる様を目にする。

 着慣れていないラウンズのマントを縋るようにぎゅっと掴む姿に痛ましさを感じざるを得ない。

 「もっとも有効に君に死を与えられるだろうが、スザク…お前は―――」

 これ以上虐める事も出来ないか。

 そこでシュナイゼルはふと疑問に思った。

 (虐める?なぜスザクを虐めなくてはならない。ユーフェミアの騎士になったのが気に喰わなかったのか、彼女の心を開いた事か?相談無く父上の騎士になった事か。)

 どれも当てはまって、違うような気がした。

 「……ぃんです。」

 紡がれた言葉はスザクらしくなく、小さく聞き取れず震えた唇が動くのを目を眇めて見守っていた。

 聞き取れずとも意味はわかる。『死ねない』といったのだろう。

 「それは、ユーフェミアのためかな?」

 我ながら嫉妬深い。いや、執着深いといった所だろうか。

 父上が彼を気に入らない筈がない。力を全てといい切る父親にとって彼程その好みに類するものはいないだろう。

 おまけに彼は父親が寵愛していたマリアンヌ皇妃との類似点も多い。

 その父親の騎士になってしまったのだ、今さらユーフェミアの事を気に掛けても意味はあるまい。

 死んだ者は至高の存在とされやすいとは云え、生きている者の方がどうしても与える影響力は強いのだから。

 それでも聞かずにはいられない自分に呆れた笑いが零れそうになるのを耐えてスザクの言葉をまった。

 「それもあります。ですが…それ以上にゼロの術下に嵌りました。」

 「…なる程。」

 机から椅子を少し離してスザクにむかって近付くように手を招いた。

 意図を察してシュナイゼルの元へとスザクは向かっていく。

 「ゼロに不可思議な力があるという報告は聞いてはいるよ、眉唾ものだとは思っていたがね。」

 近付いてくるスザクの頬を手袋越しになでた。

 「彼の力は本物です。ユーフェミア様も彼の術下に嵌り、あのような事を…自分がついていながら申し開きもありません。」

 表情一つ変えないスザクに苦笑する。

 温かさは昔と変らないというのに。いや…本質は何一つ変っていないのだろう。

 「お前にはこれ以上残酷な事はないだろうが、私はゼロに感謝しなくてはならないのかな。」

 この少年の死を奪い去ったというのであれば、義妹に汚名をふっかけ殺してくれた事さえ安い犠牲のように思えてしまう。

 怪訝な顔で見下ろしてくるスザクに座りなさいと目で命じた。

 (世間では白きカリスマなどとは言われているがね…。人として破綻している。)

 その点は父親と似ているのだろう。

 あれも望んだ物に対する執着に何ものの犠牲も厭わない。

 父親の望む物に比べれば自分の真に望むものはささやかなものだと思える分かわいいものだろうか。

 (……下らない。)

 ささやかであろうと、なかろうと、そんなものは関係ない。

 スザクの頬にあてた手を後頭に運んで頭を抱きしめてあやす様にスザクの背を叩いた。

 「――呆れる程に私は冷たい男だ。」

 この腕の中の温もりと生さえ手に入るならば――――。

 腕の中の温もりはもがく事も何もせず、大人しく胸に頭を預けてくれていた。

 「……あなたは、温かい方です。」

 くぐもった声に聞こえた気がした。湿った声にも聞こえたが、きっと気のせいだろう。

 そう思うのがお互いに今はいいのだろうとは思う。

 思うが…多少はこの少年の心の中に自分の居場所がある証に思えて、少年の中に居場所を浸透させるように殊更優しく何度も少年の背中を撫でた。

 「それは、お前だよ、スザク……お前は人だ。温もりだけは失ってはいけない。いいね?」

 父親の元へと行ってしまったとはいえ、彼を手放す事を、彼を諦める事を諦めたのはこの時だったのだろう。

 スザクは頷く事も返事を返す事もしなかった。

 数日後、EU攻略のために彼と彼を守る特派達を手元に置く手筈を全て整えた。


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