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注意:スザクが精神崩壊ネタ/でも多分暗くはない…ような。


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 ふるりと瞼が震えて、瞼の奥から翠色の瞳が現れる。
何か違和感めいた物を感じながらスザクは首を傾げた。
 
「寝ぼけ……てるのかな。」
 
寝ぼける
 
 それを無視して父玄武に挨拶に向かう。一家の家長、しかも敬愛と畏怖の対象である父親に挨拶するのは至極当然の事で、日課でもあった。
 
 「おはようございます。父さん。」
 
すると、何か驚いたように瞳が見開かれて、額に手を当てられた。びくりとスザクは体を震わせる。今まで父親から、このような心配されるような扱いを受けた事はあっただろうか。不思議ではあるし、くすぐったくもある。だが、それ以上に何故か嬉しかった。
父親にそういう事をもう望んだりしてはならないのだと思っていた。しかも…
 
「あの…父さん?」
 
あろう事かスザクを抱きしめ、慈しむように頭を撫でる。驚きに目を見開き固まった。だけれど、嬉しくもある。そのまま朝食につこうとしたら、今日は外食をしようと外で食べる事になった。何時もめったに食べる事のない洋食を朝食として食べる事も嬉しいが、それ以上に父とこうして接する事が出来るのが嬉しかった。
 
「父さん、だけど、父さんは忙しくは……とても僕は嬉しいけれども。」
 
父に少しでも異を唱えるのは良くないと思いながら、怒られるという確信をもって問いかけると、たまには良いだろうという返事が戻ってきた。
 
(今日って誕生日か何かだったっけ?)
 
考えてみても思い浮かばない。そもそも、誕生日だからという程度で玄武がスザクに甘い筈がないのだ。あって、たまに政治的な意味でパーティーを開く程度の事だろう。それだって、スザクが望んでいるわけでもないのに、だ。
 
不思議な面持ちをぬぐい切れず、そして、家へと戻る。すると、門には心配そうな顔をしたルルーシュとナナリーがいた。
 
「ルルーシュ?ナナリー?どうしたんだよ。そんな顔をして。」
 
ルルーシュはスザクの声を聞くと不安そうに、心配そうに顔を顰める。そして、ナナリーは車椅子から落ちる事も厭わずにスザクに抱きついた。
 
「スザクさん…スザクさん…」
 
「どうしたんだよ、ナナリー。何かあったのか?あ…まさかルルーシュが虐めたとか。ってそんなわけないか。あのルルーシュが。」
 
 そう、何よりもナナリーを大切に甘やかしているルルーシュがそんな事をする筈がない。となると何だろうか?日本人に虐められた?だったらルルーシュはもっと憤慨している様子を見せる筈だ。なら、ナナリーのパニックだろうか。
 ルルーシュはたまに、ナナリーがパニックを起こす事をスザクに話したりしていたのだから。可能性は無いとは言えなかった。
 
 「ルルーシュ…ナナリーに、何かあったのか?」
 
 ルルーシュはそれに、「いや…」とか何かを言い淀んでいた。大好きな紫色の瞳が翳りを帯びる。たまにそういう事はあるけれど、ナナリーに関する事でそれはとても珍しい。もしくは、枢木の家の者が何かしたならば、スザクに気遣って言い淀む事もあるかもしれない。
 
 「おい。もしも誰か家の奴がナナリーに何かしたんだったらちゃんと言えよ?」
 
 そこまで言って、しまったと顔を顰めた。後ろにはまだ父さんがいる。そんな時に乱暴な物言いをしてしまったり、家の人の不始末を疑うような事をしてしまうなんて合ってはならない事だった。おそるおそる父親を見ると、玄武は複雑そうな表情でルルーシュとナナリー、そしてスザクを見るだけだった。
 そこで少し背が寒くなる。ひょっとして、ナナリーやルルーシュに父さんが何かするんじゃないかと。父さんはブリタニアに対して良い感情なんて持っていない筈だ。というよりも日本人なら誰しもそうだろう。ブリ鬼とブリタニア人を呼ぶくらいなのだから。
 
 そんな時、スザクを呼ぶ声にほっとすると同時に縋るような顔で声の主を振りむいた。
 
 「藤堂先生っ…!!」
 
 思わず嬉しくて、ほっとして、嬉しさに顔を明るくさせて藤堂の方へと顔を向けると、スザクの声がすると同時に、ぴたりと、藤堂の動きが止まった。
 
 「先生?」
 
 どうも、強張った表情でルルーシュやナナリー、それに玄武と顔を合わせる。
 
(何か変な事でも起こったのだろうか。ブリタニアが攻めてきたとか。そういう話なのだろうか。だとしたら、ナナリーは?ルルーシュはどうなるのだろうか。父さんはどういう判断を…藤堂先生は戦争に行ってしまうわけで、藤堂先生は強いから何かある事はない…ないと思う…けれど…うっ…っ)
 
 途端、何故かスザクの頭に鋭い痛みが駆け抜ける。頭を押さえ、崩れ落ち蹲るスザクは、視界の白けていく端で、藤堂と玄武、そしてルルーシュとナナリーの顔が見えて…そして……。
 
 






 
「それで…スザクさんは…その、御容態はどうだったのでしょうか?お兄様…。」
 
「疲れ…かもしれないね。いや、色々とあり過ぎて、精神の均衡を失ったか。いずれにしても、ゼロの必要性がある程度なくなった時期であって良かったとも言えるかもしれないね。」
 
「シュナイゼル兄様っ…!それは……どういう……」
 
食ってかかるナナリーに、シュナイゼルは困ったような笑みを浮かべてナナリーの頭をなだめるように撫でた。
 
「すまない。スザク君をゼロとしてだけの利用価値があるとして言ったわけではないのだよ。ただ、彼は頑なに枢木スザクという人間を捨てて孤独にひた走っていたからね。孤独は人を狂わせる。」
 
ナナリーとロイドにのみ向けられる視線はジノへと向けられる事はなく、そこに自分が何かしら期待を持たれていたのだろうかと。そして何もできなかった結果がこれかと拳を握りしめた。
 
「でも、ふふ…自分からスザクさんに戻って下さるのなら、不謹慎ですけれど、好都合かもしれませんね。」
 
「そうだね…今まで誰もが勧めても受け入れなかったし、これからも、彼のままなら受け入れなかっただろう。これは良い機会だ。しかし…私はそんなにルルーシュに似ているのかな。」
 
シュナイゼルが複雑そうに首を傾げるとロイドは手をひらひら~とふりながら。
 
「殿下はまだいいじゃないですかぁ~ボクなんてスザク君のお父さんと間違えられてるんですよぉ~写真、見たことあります?小太りで、頭の生え際が危うい感じのおっさんですよ、おっさん。」
 
「ロイド…もう十分に私たちはおっさんと言える年齢だろう。」
 
「まぁ。まだそんな年齢ではないと思います。」
 
シュナイゼルが笑みを堪えて言うとナナリーが頭をゆるく振って否定する。
 
「ま、僕は別に構わないけれどね~スザク君を父親として甘やかせてあげられるし~?スザク君の後見でもあの子頑固だからさ~?そういう甘え、素直にしてくれないんだよねぇ。」
 
「私も、ルルーシュの代わりでも構わないかもしれないね。まぁ、違いは何れ分かるだろうし」
 
「私は私のままですから。」
 
そして、三人は憐れみの瞳をスザクよりも年下であるジノ・ヴァインベルグに向ける。
 
「スザク君が元に戻るまでとはいえ……変に手を出さないでよぉ?藤堂将軍ってスザク君にとって憧れで信頼の象徴みたいだしさぁ。ま、君は一応は『騎士』なんだから?スザク君が間違えたのを良い事にあれこれしないだろうけどぉ~」
 
「あれこれ!?」
 
「ジノさん。ケダモノになったら、容赦なくチョッキンです。」
 
「ナニを!?」
 
「ハハハハ…勿論ナニをちょっきん…位で済むと思ったら甘い考えだよ、ジノ君。」
 
「……善処します。」
 
とはいえ、ジノには自信はあまりない。藤堂と間違えられたのはショックだったが、スザクが慕って藤堂さんと呼んだあの表情は凄く可愛くて…撫でまわしたくなって、抱きしめたくて。
 
…そして、あの笑顔が失われた経緯を考えると、そして、それを向けられるのが自分ではない事に、強い痛みがどこかに走って、ジノは顔を顰めた。

―――――――――――――――
ルルーシュさんのスザクさんのお傍に置く人チョイスに頭が下がります。
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