ご訪問感謝致します。ここは個人による非公式のヲタブログです。女性向注意。 取り扱う作品の原作者様、及び関係諸団体様とは一切関わりありません。 日記とスザク受け/ギアス妄想を書き綴る予定。 何かございましたら拍手・メールフォームその他からお願い致します。
×
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
まだやるかルル誕ネタ/死にネタ思わせぶり濃厚/ルルスザ/ランスロットパイロットバレ前の誕生日設定で。
#####
その日はとても良い日だった。
朝起きて着替えが丁度終った頃合に部屋をノックされ扉を開ける。
「お誕生日おめでとうございます、お兄様。」
天使のような微笑を浮かべたナナリーがいた。
「あ…」
「ふふ、お兄様やっぱり忘れていました?今日はお兄様の誕生日なんですよ。」
しょうがないお兄様…そう言って微笑むナナリーに自然と頬が緩む。
「…ありがとう、ナナリー。」
ゆっくり屈んでナナリーの手に手を重ねると車椅子の背もたれに隠していたのだろう。
後から包みを取り出して、はにかんだ笑みを浮かべながらルルーシュに手渡した。
「お兄様のために作ったんです。使って下さいますか?」
包みを開けるとよく自分が着ているジャケットと同じ赤い色のマフラーが見えた。
「咲世子さんに教えて貰いながら、上手く出来ているか不安なんですけど。」
確かに所所ほつれはあるものの、目の見えない状態でよくここまでと感動さえ覚える。
あまりの嬉しさに目頭が熱くなりながらも、早速壊れ物を扱うような手つきで首にマフラーを巻いた。
「ありがとう。とても温かいよ、ナナリー。大切に使わせてもらう。」
その言葉に嬉しそうに笑うとナナリーは車椅子を引く、その後をルルーシュは支えて朝食を取るべく食堂へと向かった。
朝食の扉を開くと、そこにはスザクがいた。
「おはよ、ナナリー、ルルーシュそれから……お誕生日おめでとう、ルルーシュ。」
とても柔らかい笑みにくらくらする。あたりには懐かしい味噌スープの香りが漂っていた。
「スザク…」
「ごめんね、キッチン勝手に借りちゃった。あと…プレゼント、家に置いてきちゃったみたいで…。」
バツが悪そうに頭を掻きながら上目で顔色をうかがわれる。
「あ、いや…」
「だから、せめて朝食でもって。この味噌、僕が作ったんだよ。あ、ルルーシュ、お味噌は大丈夫だったっけ?」
「あぁ。納豆はダメだが。」
急に不安そうに聞いてくるので、勢に飲まれて頷けば「良かった」と嬉しそうに微笑まれた。
「とても、嬉しいよ。ありがとう。スザク。」
まさか、会えるとも祝って貰えるとも思っていなかった。
しかも一日の始まりの朝に。自分でも自分の誕生日を忘れていたくらいで当然だ。
「そうそう、お兄様、今日の放課後は生徒会にいらして下さいね?ミレイさんがとても張り切ってらっしゃいましたから。」
その言葉に口が引き攣る。
去年は主役でパーティーという名目でかなり酷い目に会わされた。
張り切っているという言葉にどうなるかが目に見えた気がする。
そこで、逃げ道のように今日の予定を思い出す。
――黒の騎士団――
(しまった…迂闊だったな、今日はカワサキゲットーで…いや、それは大丈夫か。)
今日の予定はとあるブリタニア軍事施設の奇襲攻撃であって、自分がいる必要は特に無い。
玉城一人ではさすがに心配だが、扇と他数名がいれば十分過ぎる程だ。
何より、楽しみにしているナナリーの表情を曇らせるわけにはいかない。
「あぁ、わかってるよナナリー。逃げないさ。」
「どうぞ皇子様」とおふざけ口調でスザクに椅子を引かれて、それに合わせて大仰に頷いて座る。
口にした味噌スープや素朴な和食の味に心が落ち着いた。
「それにしても、そんなに凄いのかい?生徒会のお誕生日会って。」
口に広がる程よい出汁と具の調和に「旨いな」と呟けば「ありがとうございます」と腹部に手をあててお辞儀をする様に笑みが零れる。スザクに作ってもらえたのだから余計に美味しく感じると言うものだ。
「あぁ、かなりな。去年はクリスマスも近いし主役だから特別衣装だと言われてトナカイの扮装をさせられた。着ぐるみならまだ許せるが、この間の猫祭りみたいなボディーペインティングだぞ。」
忌々しげに言うルルーシュの顔にスザクは思い切り笑った。
「残念だな、今年もそんなルルーシュの姿、見れないかもしれない。」
そういって申し訳なさそうにナナリーをちらりと見て項垂れた。
「仕事、入っちゃってさ。」
「そうか…」
朝に来て祝ってくれたのも、だからなのだろう。祝って欲しいと駄々を捏ねる程子供でもないが、祝って貰える筈だったとわかるともやもやとした物はたまる。ブリタニアが忌々しい。
早くぶっ潰せればどれだけ気分がいいだろうか。
「遅くなるのか?」
「そうだね…今日中に帰れたらいいんだけど。」
気まずそうに困った笑みを浮かべるスザクに、ルルーシュは一つ溜息をついて立ち上がり近付く。
「…今日を過ぎても終ったらこっちに帰って来い。」
コツンと額を小突かれてスザクは目をぱちくりとさせた。
「でも…迷惑に…」
要らない、返って迷惑にしかならない気遣いに苛っとするとすかさずナナリーが助けに入ってくれた。
「それが、お兄様のプレゼントですか?ふふ、素敵なプレゼントですね。」
有無を言わせない言葉にスザクはナナリーとルルーシュの顔を見比べて、迷いながら頷いた。
「わかった。必ず終ったらこっちに来るよ。」
「あぁ、約束だ。」
昔スザクに教えてもらった小指を絡めて約束を誓わせる。
「うん、約束。」
(帰って…か、ありがとう、ルルーシュ。)
無理難題を押し付けたと思ったが、とても幸せそうに目元を和らげたスザクの笑みにルルーシュはほっとした。
「ルルーシュ、これからの君の人生に数多くの幸せがありますように。」
そう言ったスザクの声音に気のせいか真剣味と切羽つまった何かが常に無く混ざっている気がして、少しだけ違和感を覚えた。
うとうとしていた。
時計を見ると朝の4時をもう少しで回る頃合だ。
その日―――もう昨日になるが、良い一日だった、とルルーシュは思う。
カワサキゲットーの奇襲攻撃は今までになくすんなりととても綺麗に決まったらしい。
グラスゴー製造施設を含めて大々的に破壊する事が出来たという嬉しい報告を聞けた。
ディートハルトの話では、情報規制により今夜中には無理だが明日には詳細がテレビで流れるという。
――思いもよらない収穫も得られましたのでね、きっと喜んで頂けると思いますよ。――
それまではその戦果は秘密らしい。正確な裏を取れるまで待っていて欲しいとの事だが…
(これで―――スザクをブリタニア軍に取られなくなるまで後少しか…)
生徒会の方も祝い方はやや行き過ぎていた感はあるが、今回は自分に直接的被害はなく、リヴァルが自分が受けるべき難をしょってくれたようだった。持つべきものは友人か。第三者、観客として楽しむ事が出来たし、料理も美味しかった。
生徒会のメンバーから個々に貰ったプレゼントも自分の好みにぴったりと合った物だ。
ただ一つ、心残りがあるとすれば、一日の終わりをナナリーとスザクで終えたかったが無理だったという事位か。
テーブルには自分手製のケーキと生徒会手作りのケーキ。それに、はやり自分手製の料理と生徒会手作りの料理が並んでいる。
とっておきのリヴァルが持ってきたシャンパンも、開けていないものを一瓶置いてある。
「スザクの奴…まさか、寮の方に戻ってるんじゃないだろうな。」
今日中に帰れれば良いと言う事は、次の日に跨っても終るという事だろう。
でも、まだ来ない。
軍の開発部なら、前線とは違って、ある程度都合がつくのではないか。
それとも誕生日の約束を忘れてしまっているんだろうか。
そう考えると苛々が最高潮に達する。
苛つきに任せてシャンパンの蓋を飛ばそうとした時だった。
こつん。と、音がした。
窓に目を向けると何も見えない。
また、数度こつんこつんと音がする。
(…何だ?)
目を何度か擦る。よほど眠かったのだろうか、目を凝らせばスザクが見えた。
「ルルーシュ、ここを開けてくれないかな?」
クリアに待ち侘びた声が聞こえて慌てて窓を開けた。
「スザク、遅かったな!…お帰り。もう寝てるのかと思ったぞ。」
「あはは、ごめん。ちょっと手間取っちゃって。こんな時間だし、迷ってたんだけど。でも、約束したからね。」
「当たり前だ!」とスザクの髪を軽く引っ張りながら、窓を跨いで部屋に入る姿に困った奴だとルルーシュは溜息をついた。
「おまえ、それに窓からなんて、不審者だと思われて訴えられても仕方ないぞ。」
それに軽くごめんごめんとスザクは謝る。
「ナナリーを起こしちゃまずいと思ってさ。」
「料理も冷えた。」
「うん、ごめん。でも、取っておいてくれたんだ。ありがとう、ルルーシュ。」
にへらと笑うスザクに文句を言っているのが馬鹿らしく感じた。
「あ、そうだ。ルルーシュ、これ。」
がさごそとズボンのポケットから小包を渡される。
「これ、プレゼント。」
小包を開けると、朝、ナナリーがくれたマフラーと色の同じ手袋が出てくる。
「ナナリーのマフラーと使ってもらえたらと思って。」
何が嬉しいのか、にこにことスザクが笑うから、喉が詰った。大切そうに手袋を手に握り締める。
「プレゼントは今朝、貰った。…ったく。わざわざ取りに戻るくらいならさっさと来い!」
「ごめんね…あ、でも取りに行ったわけじゃないんだ。」
ぶっきらぼうになってしまった口調を気にするわけでもなく、柔らかく否定される。
「そうか。…食事は?」
聞けば、しまった、という顔をした後に「実は…まだ…」と応える。
「馬鹿が!そういう事は先に言え!まだ育ち盛りなんだぞ俺たちは。一食抜くとどれほど体に負担がだな。…とりあえず喰え!冷たくても文句言うなよ?ああ、温めるか?」
無理矢理テーブルの前に座らせて、食事を勧め、料理を皿にもった物を押し付ける。
スザクは温めなくて良いよといいながら皿を手に取った。
「料理を温める時間があるなら、僕は君と一緒に居たいな。」
ルルーシュをひたと見つめて臆面無く、少し縋るような目で言うスザクに馬鹿がッと照れ隠しで舌打ちして、テーブルを挟んだ向かい側に座り込んだ。
スザクが食事を突付き始める。それに合わせて生徒会での催しやナナリーの様子など、今日あった一日の事をとめどなくルルーシュは話始めた。
会えないかと思っていたが実際にスザクは会いに来た。それだけで機嫌が一気に良くなるのだからゲンキンなものだと自分でも思う。
話を聞き逃すまいと、ルルーシュの言葉一つ一つを真剣に聞いてスザクが頷きを返す度に心が少しづつ軽くなっていって気持ちが弾んだ。
「今日、泊まっていくだろ?こんな時間だし。」
「そうだね、そうさせてもらおうかな。」
泊まっていくとは言っても、もう少しすれば朝日も昇ってくる頃合だろう。外を見れば空が少し白んで来ている。
(…ん?)
同時に……何故か抗いがたい眠気にルルーシュは襲われる。
いつもなら、まだ起きていられる。元々夜型で夜には強い。なのに…
「ねぇ、ルルーシュ…7年前に、君に会えて良かった。」
スザクが口を開く。ぐにゃりと視界が歪む。瞼が急激に酷く重い。
「あんまり、無茶はしないでくれよ。」
切羽詰ったような、困ったような、悲しげな目に、ドキリとする。ゼロだという事がバレているんじゃないだろうかと。
慌てて、なんだ、それはどういう意味だ?と問おうとしても、何故か瞼も口も酷く重くて動かなかった。
瞼が閉じきる寸前、とても心地良い手に頭を撫でられた。――少しだけ、母親を思い出す。
「……ルルーシュ、大好きだよ。」
心地良いテノールの声が聞こえた気がしたが、その時は既にルルーシュの意識は無かった。
朝起きると、スザクの姿が無かった。
「夢?」
それにしてはやけにリアリティーが在りすぎる。手元を見れば手袋が握られている。
なら、先にスザクは学校に行ってしまったんだろうか。
(そんな友達甲斐のない。)
少し苛立ちもしたが、昨日のスザクの言葉を思い出す。恥かしい言葉ではあるが、それだけで気分は浮きたった。
高揚した気持ちのまま食堂でニュースをつける。
ディートハルトの言によれば、今日が昨日の騎士団の活動の華々しい戦果の報告がされている筈だ。
カワサキゲットーの軍事施設の被害状況と死亡者リストが並ぶ。
その中にはブリタニアのプロトタイプ新世代のナイトメアの破壊が報じられていた。
(ディートハルトが言っていたのはこれか。確かに、これで各段と活動を起こしやすくなる。)
上手すぎる事の運びに可笑しくて口角が釣り上がり――――
少しだけ、名誉だからと名前もあげられずに死亡者数報告のみの扱いの名誉ブリタニア人に苦々しい思で唇を食んだ。
(スザク、だから黒の騎士団に来い。お前がいるべき場所はそこじゃないんだ。)
そしてルルーシュは先にスザクが行っているであろう学校へ行と向かった。
先に学校に行った文句の一つでもいって頬でも引っ張らないと気が済まない。心が弾む。
スザクはいなかった。
次の日も、その次の日も、次の日も、次の日も、次の日も、次の日も。
あの明け方を境に、ルルーシュはスザクと会う事がなくなった。
―――――――――――
パラレルパラレル。こういう未来も在り得たという事で。
その日はとても良い日だった。
朝起きて着替えが丁度終った頃合に部屋をノックされ扉を開ける。
「お誕生日おめでとうございます、お兄様。」
天使のような微笑を浮かべたナナリーがいた。
「あ…」
「ふふ、お兄様やっぱり忘れていました?今日はお兄様の誕生日なんですよ。」
しょうがないお兄様…そう言って微笑むナナリーに自然と頬が緩む。
「…ありがとう、ナナリー。」
ゆっくり屈んでナナリーの手に手を重ねると車椅子の背もたれに隠していたのだろう。
後から包みを取り出して、はにかんだ笑みを浮かべながらルルーシュに手渡した。
「お兄様のために作ったんです。使って下さいますか?」
包みを開けるとよく自分が着ているジャケットと同じ赤い色のマフラーが見えた。
「咲世子さんに教えて貰いながら、上手く出来ているか不安なんですけど。」
確かに所所ほつれはあるものの、目の見えない状態でよくここまでと感動さえ覚える。
あまりの嬉しさに目頭が熱くなりながらも、早速壊れ物を扱うような手つきで首にマフラーを巻いた。
「ありがとう。とても温かいよ、ナナリー。大切に使わせてもらう。」
その言葉に嬉しそうに笑うとナナリーは車椅子を引く、その後をルルーシュは支えて朝食を取るべく食堂へと向かった。
朝食の扉を開くと、そこにはスザクがいた。
「おはよ、ナナリー、ルルーシュそれから……お誕生日おめでとう、ルルーシュ。」
とても柔らかい笑みにくらくらする。あたりには懐かしい味噌スープの香りが漂っていた。
「スザク…」
「ごめんね、キッチン勝手に借りちゃった。あと…プレゼント、家に置いてきちゃったみたいで…。」
バツが悪そうに頭を掻きながら上目で顔色をうかがわれる。
「あ、いや…」
「だから、せめて朝食でもって。この味噌、僕が作ったんだよ。あ、ルルーシュ、お味噌は大丈夫だったっけ?」
「あぁ。納豆はダメだが。」
急に不安そうに聞いてくるので、勢に飲まれて頷けば「良かった」と嬉しそうに微笑まれた。
「とても、嬉しいよ。ありがとう。スザク。」
まさか、会えるとも祝って貰えるとも思っていなかった。
しかも一日の始まりの朝に。自分でも自分の誕生日を忘れていたくらいで当然だ。
「そうそう、お兄様、今日の放課後は生徒会にいらして下さいね?ミレイさんがとても張り切ってらっしゃいましたから。」
その言葉に口が引き攣る。
去年は主役でパーティーという名目でかなり酷い目に会わされた。
張り切っているという言葉にどうなるかが目に見えた気がする。
そこで、逃げ道のように今日の予定を思い出す。
――黒の騎士団――
(しまった…迂闊だったな、今日はカワサキゲットーで…いや、それは大丈夫か。)
今日の予定はとあるブリタニア軍事施設の奇襲攻撃であって、自分がいる必要は特に無い。
玉城一人ではさすがに心配だが、扇と他数名がいれば十分過ぎる程だ。
何より、楽しみにしているナナリーの表情を曇らせるわけにはいかない。
「あぁ、わかってるよナナリー。逃げないさ。」
「どうぞ皇子様」とおふざけ口調でスザクに椅子を引かれて、それに合わせて大仰に頷いて座る。
口にした味噌スープや素朴な和食の味に心が落ち着いた。
「それにしても、そんなに凄いのかい?生徒会のお誕生日会って。」
口に広がる程よい出汁と具の調和に「旨いな」と呟けば「ありがとうございます」と腹部に手をあててお辞儀をする様に笑みが零れる。スザクに作ってもらえたのだから余計に美味しく感じると言うものだ。
「あぁ、かなりな。去年はクリスマスも近いし主役だから特別衣装だと言われてトナカイの扮装をさせられた。着ぐるみならまだ許せるが、この間の猫祭りみたいなボディーペインティングだぞ。」
忌々しげに言うルルーシュの顔にスザクは思い切り笑った。
「残念だな、今年もそんなルルーシュの姿、見れないかもしれない。」
そういって申し訳なさそうにナナリーをちらりと見て項垂れた。
「仕事、入っちゃってさ。」
「そうか…」
朝に来て祝ってくれたのも、だからなのだろう。祝って欲しいと駄々を捏ねる程子供でもないが、祝って貰える筈だったとわかるともやもやとした物はたまる。ブリタニアが忌々しい。
早くぶっ潰せればどれだけ気分がいいだろうか。
「遅くなるのか?」
「そうだね…今日中に帰れたらいいんだけど。」
気まずそうに困った笑みを浮かべるスザクに、ルルーシュは一つ溜息をついて立ち上がり近付く。
「…今日を過ぎても終ったらこっちに帰って来い。」
コツンと額を小突かれてスザクは目をぱちくりとさせた。
「でも…迷惑に…」
要らない、返って迷惑にしかならない気遣いに苛っとするとすかさずナナリーが助けに入ってくれた。
「それが、お兄様のプレゼントですか?ふふ、素敵なプレゼントですね。」
有無を言わせない言葉にスザクはナナリーとルルーシュの顔を見比べて、迷いながら頷いた。
「わかった。必ず終ったらこっちに来るよ。」
「あぁ、約束だ。」
昔スザクに教えてもらった小指を絡めて約束を誓わせる。
「うん、約束。」
(帰って…か、ありがとう、ルルーシュ。)
無理難題を押し付けたと思ったが、とても幸せそうに目元を和らげたスザクの笑みにルルーシュはほっとした。
「ルルーシュ、これからの君の人生に数多くの幸せがありますように。」
そう言ったスザクの声音に気のせいか真剣味と切羽つまった何かが常に無く混ざっている気がして、少しだけ違和感を覚えた。
うとうとしていた。
時計を見ると朝の4時をもう少しで回る頃合だ。
その日―――もう昨日になるが、良い一日だった、とルルーシュは思う。
カワサキゲットーの奇襲攻撃は今までになくすんなりととても綺麗に決まったらしい。
グラスゴー製造施設を含めて大々的に破壊する事が出来たという嬉しい報告を聞けた。
ディートハルトの話では、情報規制により今夜中には無理だが明日には詳細がテレビで流れるという。
――思いもよらない収穫も得られましたのでね、きっと喜んで頂けると思いますよ。――
それまではその戦果は秘密らしい。正確な裏を取れるまで待っていて欲しいとの事だが…
(これで―――スザクをブリタニア軍に取られなくなるまで後少しか…)
生徒会の方も祝い方はやや行き過ぎていた感はあるが、今回は自分に直接的被害はなく、リヴァルが自分が受けるべき難をしょってくれたようだった。持つべきものは友人か。第三者、観客として楽しむ事が出来たし、料理も美味しかった。
生徒会のメンバーから個々に貰ったプレゼントも自分の好みにぴったりと合った物だ。
ただ一つ、心残りがあるとすれば、一日の終わりをナナリーとスザクで終えたかったが無理だったという事位か。
テーブルには自分手製のケーキと生徒会手作りのケーキ。それに、はやり自分手製の料理と生徒会手作りの料理が並んでいる。
とっておきのリヴァルが持ってきたシャンパンも、開けていないものを一瓶置いてある。
「スザクの奴…まさか、寮の方に戻ってるんじゃないだろうな。」
今日中に帰れれば良いと言う事は、次の日に跨っても終るという事だろう。
でも、まだ来ない。
軍の開発部なら、前線とは違って、ある程度都合がつくのではないか。
それとも誕生日の約束を忘れてしまっているんだろうか。
そう考えると苛々が最高潮に達する。
苛つきに任せてシャンパンの蓋を飛ばそうとした時だった。
こつん。と、音がした。
窓に目を向けると何も見えない。
また、数度こつんこつんと音がする。
(…何だ?)
目を何度か擦る。よほど眠かったのだろうか、目を凝らせばスザクが見えた。
「ルルーシュ、ここを開けてくれないかな?」
クリアに待ち侘びた声が聞こえて慌てて窓を開けた。
「スザク、遅かったな!…お帰り。もう寝てるのかと思ったぞ。」
「あはは、ごめん。ちょっと手間取っちゃって。こんな時間だし、迷ってたんだけど。でも、約束したからね。」
「当たり前だ!」とスザクの髪を軽く引っ張りながら、窓を跨いで部屋に入る姿に困った奴だとルルーシュは溜息をついた。
「おまえ、それに窓からなんて、不審者だと思われて訴えられても仕方ないぞ。」
それに軽くごめんごめんとスザクは謝る。
「ナナリーを起こしちゃまずいと思ってさ。」
「料理も冷えた。」
「うん、ごめん。でも、取っておいてくれたんだ。ありがとう、ルルーシュ。」
にへらと笑うスザクに文句を言っているのが馬鹿らしく感じた。
「あ、そうだ。ルルーシュ、これ。」
がさごそとズボンのポケットから小包を渡される。
「これ、プレゼント。」
小包を開けると、朝、ナナリーがくれたマフラーと色の同じ手袋が出てくる。
「ナナリーのマフラーと使ってもらえたらと思って。」
何が嬉しいのか、にこにことスザクが笑うから、喉が詰った。大切そうに手袋を手に握り締める。
「プレゼントは今朝、貰った。…ったく。わざわざ取りに戻るくらいならさっさと来い!」
「ごめんね…あ、でも取りに行ったわけじゃないんだ。」
ぶっきらぼうになってしまった口調を気にするわけでもなく、柔らかく否定される。
「そうか。…食事は?」
聞けば、しまった、という顔をした後に「実は…まだ…」と応える。
「馬鹿が!そういう事は先に言え!まだ育ち盛りなんだぞ俺たちは。一食抜くとどれほど体に負担がだな。…とりあえず喰え!冷たくても文句言うなよ?ああ、温めるか?」
無理矢理テーブルの前に座らせて、食事を勧め、料理を皿にもった物を押し付ける。
スザクは温めなくて良いよといいながら皿を手に取った。
「料理を温める時間があるなら、僕は君と一緒に居たいな。」
ルルーシュをひたと見つめて臆面無く、少し縋るような目で言うスザクに馬鹿がッと照れ隠しで舌打ちして、テーブルを挟んだ向かい側に座り込んだ。
スザクが食事を突付き始める。それに合わせて生徒会での催しやナナリーの様子など、今日あった一日の事をとめどなくルルーシュは話始めた。
会えないかと思っていたが実際にスザクは会いに来た。それだけで機嫌が一気に良くなるのだからゲンキンなものだと自分でも思う。
話を聞き逃すまいと、ルルーシュの言葉一つ一つを真剣に聞いてスザクが頷きを返す度に心が少しづつ軽くなっていって気持ちが弾んだ。
「今日、泊まっていくだろ?こんな時間だし。」
「そうだね、そうさせてもらおうかな。」
泊まっていくとは言っても、もう少しすれば朝日も昇ってくる頃合だろう。外を見れば空が少し白んで来ている。
(…ん?)
同時に……何故か抗いがたい眠気にルルーシュは襲われる。
いつもなら、まだ起きていられる。元々夜型で夜には強い。なのに…
「ねぇ、ルルーシュ…7年前に、君に会えて良かった。」
スザクが口を開く。ぐにゃりと視界が歪む。瞼が急激に酷く重い。
「あんまり、無茶はしないでくれよ。」
切羽詰ったような、困ったような、悲しげな目に、ドキリとする。ゼロだという事がバレているんじゃないだろうかと。
慌てて、なんだ、それはどういう意味だ?と問おうとしても、何故か瞼も口も酷く重くて動かなかった。
瞼が閉じきる寸前、とても心地良い手に頭を撫でられた。――少しだけ、母親を思い出す。
「……ルルーシュ、大好きだよ。」
心地良いテノールの声が聞こえた気がしたが、その時は既にルルーシュの意識は無かった。
朝起きると、スザクの姿が無かった。
「夢?」
それにしてはやけにリアリティーが在りすぎる。手元を見れば手袋が握られている。
なら、先にスザクは学校に行ってしまったんだろうか。
(そんな友達甲斐のない。)
少し苛立ちもしたが、昨日のスザクの言葉を思い出す。恥かしい言葉ではあるが、それだけで気分は浮きたった。
高揚した気持ちのまま食堂でニュースをつける。
ディートハルトの言によれば、今日が昨日の騎士団の活動の華々しい戦果の報告がされている筈だ。
カワサキゲットーの軍事施設の被害状況と死亡者リストが並ぶ。
その中にはブリタニアのプロトタイプ新世代のナイトメアの破壊が報じられていた。
(ディートハルトが言っていたのはこれか。確かに、これで各段と活動を起こしやすくなる。)
上手すぎる事の運びに可笑しくて口角が釣り上がり――――
少しだけ、名誉だからと名前もあげられずに死亡者数報告のみの扱いの名誉ブリタニア人に苦々しい思で唇を食んだ。
(スザク、だから黒の騎士団に来い。お前がいるべき場所はそこじゃないんだ。)
そしてルルーシュは先にスザクが行っているであろう学校へ行と向かった。
先に学校に行った文句の一つでもいって頬でも引っ張らないと気が済まない。心が弾む。
スザクはいなかった。
次の日も、その次の日も、次の日も、次の日も、次の日も、次の日も。
あの明け方を境に、ルルーシュはスザクと会う事がなくなった。
―――――――――――
パラレルパラレル。こういう未来も在り得たという事で。
PR
この記事にコメントする