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ルルーシュさんの誕生日の話/シリアス
登場人物はスザク、セシル、ルルーシュ、C.C./
ルルスザ希望ですがスザルルでも。


@@@@@



 (ユフィが死んだのは、今日みたいな寒い日だった。)

 窓の外を見れば寒い夜に相応しく清んだ空気に星が映えている。
 手の中にある騎士章を枢木スザクは強く握り締めた。
 騎士章は返還していないまま手元にある。

 (俺があの時、ルルーシュを助けていなければ。)

 8年前、父親がルルーシュを殺そうとしていた時、父親を殺してルルーシュを選んだのは自分。
 そして、その助けたルルーシュがユフィを殺したゼロだと認識せざる得なくなったのが一年程前の事だった。

 (何であの時、僕はゼロの仮面を撃っちゃったのかな。)

 撃たなくても知っていた。ただ、確実な証拠がないという事に縋ってルルーシュはゼロじゃないと自分に言い聞かせて自分を騙していただけだ。

 ユフィを殺した。学園の皆を人質に取って危険な目に合わせた。
 ブリタニア人も日本人も沢山殺して、無用な戦いを増やして世界をひっかきまわした。
 ユフィを操った、その行動を利用して汚名を着せた。

 「だから、俺はルルーシュ、お前を殺さなくちゃならない。」

 (それなのに――――――それなのに、何で…)

 「…ッ!」
  
 握り締めた手に軽い痛みが走り、手から血がポタポタと数滴落ちた。
 赤い点を苦々しく睨みながら嘲笑う。

 「何時までも外にいると風邪をひくわよ。」

 優しげな声に顔を上げると丁度セシルが開いた窓を閉めていた。

 「…あの…」

 「ごめんなさいね、ちょっと書いてもらわないといけない書類があって…部屋が空いてたから勝手に入ってしまったの。」

 「あ…いえ、そんなつもりでは、すみません。」

 セシルの謝罪を謝罪で押し返すと困った笑みを返される。

 「悩み事?」

 「…いいえ。」

 否定すればますます眉尻をさげられてしまう。
 書類を手渡され、その時にセシルは手の傷を見たのか、目を閉じて溜息をついた。

 「それ、ユーフェミア様の?」

 「…。」

 黙っていれば、そのまま黙って握り締めていた騎士章を手からやんわりと救出し、手際よくハンカチで血をぬぐう。

 さらりさらりさらり。

 上品な白いレースが傷に触れてどす黒く汚れていく。
 やっぱり、汚い人間の血は、汚くて周りのものを汚していくんだ。

 そんな思いに深く沈んでいく。

 「眉間に皺が寄ってるわ。」
 
 思いに溺れていれば、軽く眉間を突付かれて意識が浮上した。
 手を見れば傷には絆創膏が貼られ終わっている。

 それで終わり――――の筈だったのに。

 「存在を、許してはいけない人が、いるんです。」

 平静であるつもりだった。
 そのつもりなのに、気づけば言葉が零れていた。
 出た声は酷く現実感を伴なわない癖に、どこだかわからないどこかを酷く不快に、痛めつけた――気がする。
 それが不思議でスザクは首を傾げる。手を握り締めて開くが傷が痛んでいるというわけではない。

 セシルは黙ったままスザクをただ見つめていた。
 沈黙に促されて、言葉が零れ話しやすくなった声をそのまま紡ぐ。

 「存在を許してはいけないのに――――その人が在る事で落ち着くんです。」

 そう、許しちゃいけない、殺さなきゃいけないのに、何でこんなに落ち着くんだろう。それに――

 「その人が、在るという事に、何かに感謝したくなる。…何でなんでしょうか。」

 決まっている。俺が自分に甘いからだ。醜くて汚いから。

 (自分の甘さで……本当は、許しちゃいけないのに、認めたらいけないのに。)

 何で、求めてしまうんだろう。止まった時間に戻りたい。

 (望んじゃいけないのに…)

 ふと、暖かな温もりを頬に感じて現に戻る。
 セシルが頬を手で包んでじっと目を見つめていた。

 (―――人の涙には体温が効くんですよ。)

 優しい少女の声が頭に蘇えり、セシルと重なる。

 「存在している事に感謝をしたとしても、許されない人はいないわ。それに――そんな事は自分に言い聞かせるものでもないの。」

 (そう、なのかな……)
 気持ちを見透かされでもしたのか、酷く優しげに笑われて抱きしめられて頭を撫でられた。
 (もう、しょうがない子ね。)
 そんな笑みとともに。


 抱きしめられたまま、スザクは黒い空に輝く月と星を見つめた。

 ルルーシュ、君も今、この空を見ているかい?
 ―――誕生日、おめでとう。
 君がいる事に、感謝してる。…それ位は思っても、許されるかな。






 「ルルーシュ、何をしている。」

 月を見ていたら後から声をかけられた。
 それでも、見ている月から何故か目を逸らす気にはなれず、振り返る事もせすに答える。

 「月を見ていたんだ。」

 「ほう…?これは驚きだ、お前にそんな情緒を解する高尚な趣味があったとはな。」

 分かりきった皮肉った返事に「悪いか」と悪態をつきながらC.C.を振り返った瞬間の事だった。

 「…!?」

 何かが、あり得ない人間の声が聞こえた気をして慌てて聞こえた方向を――月を――見返す。

 「どうした、急に。何かあったのか?」

 不信そうな声に「いや…」と返しながら空を見るのを止めてC.C.の方に向かい合った。
 
 「何でもない。」

 それで終わりだと話題を打ち切り、これからの計画の事、話し合わなくてはならない事の話題に切り替えようとした。

 しかし、そこでC.C.の表情に違和感を感じた。
 
 「なら、何故泣く?」
 
 酷く心配そうな、気遣わしげな顔と―――そして声で。
 そっと頬に手を伸ばされ、言われた事実に驚く。

 でも、そんな事はどうでもいい。どうでもいいんだ。
 それよりも、そんな事よりも………

 (スザク、お前は今、どうしている?)

 お前に無償に会いたいよ。



―――――――
二期は一年後なんだとか。どうなっているのか楽しみです。
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